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広島大学歯学部矯正学教室 丹根教授 退任記念 〜矯正学への情熱と感謝を込めて〜

教授退任3

日本矯正歯科学会認定医・歯学博士   河底晴紀

2025年3月、広島大学歯学部矯正学教室の丹根一夫教授が定年を迎え、長年にわたるご功績に幕を下ろされました。

先日、広島市内で開催された退任記念パーティーには、全国から門下生・同門の先生方・関係者をはじめ総勢300名を超える参加者が集まり、盛大に丹根教授のこれまでの歩みを称えました。

私も大学院時代から臨床・研究を通じて直接ご指導いただいた一人として、感慨深い時間となりました。

今回は、丹根教授への感謝の思いと、教授が私たち後進に残してくださった「矯正学の精神」について綴りたいと思います。


■ 丹根教授のご経歴とご功績

丹根一夫教授は、長年にわたり広島大学歯学部矯正学教室を率い、日本の矯正歯科学を牽引してこられた第一人者です。

特に「顎顔面形態と咬合機能の調和」に焦点を当てた研究は、国内外の学会で高く評価され、多くの学術論文・講演を通じて矯正臨床に大きな影響を与えました。

また、教授は教育者としても情熱的で、

「臨床で患者さんを治す力を持つ研究者を育てる」

という理念のもと、数多くの大学院生・若手矯正医を育成してこられました。

全国の矯正専門医の中で、「丹根門下生」として活躍する先生方が多いのも、その指導の深さを物語っています。


■ 教授の指導スタイル 〜バリバリの関西弁に込められた愛〜

大学院時代、丹根教授の授業や症例検討会では、常に厳しさと温かさが共存していました。

バリバリの関西弁で鋭いツッコミを受けることもあり、最初は緊張の連続でした。

しかし、時間が経つにつれてそれが“本気の愛情”であることがわかりました。

教授は、学生一人ひとりの可能性を信じ、徹底的に鍛え上げてくださる方でした。

たとえば臨床実習中、矯正装置の調整で迷っていると

「そんなんで患者さんに触れるんか?自分の診断に責任持ちや!」

と叱咤される一方、治療が成功した際には

「よう頑張ったな。ちゃんと考えとるやないか」

と笑顔で褒めてくださる。

そのギャップこそが、学生たちにとって何よりの励みだったのです。


■ 大学院での研究と学びの日々

丹根教授のもとでの大学院生活は、臨床だけでなく研究の厳しさと楽しさを教えていただく貴重な時間でした。

教授は常に「論文は世界に通じる言葉や」と言われ、英語論文の構成やデータ解析、統計の重要性を徹底的に指導されました。

学会発表の前夜には、発表スライドを一枚一枚見ながら丁寧にフィードバックしてくださり、発表当日も客席の最前列で見守ってくださった姿が今でも鮮明に思い出されます。

また、教授は学術的探求心と同時に、臨床の現場での実践を重視されていました。

「矯正医は机上の理論だけではあかん。患者さんの口の中が教科書や」

という言葉が、今でも私の診療哲学の中心にあります。


■ 丹根教授が教えてくれた「矯正治療の本質」

教授が繰り返し語っておられたのは、

**“矯正治療は歯を並べることが目的ではなく、咬合と顔貌の調和を作ること”**でした。

Eラインや口元のバランス、顎の成長方向など、

一つひとつの症例に対して解剖学的・機能的視点からアプローチする姿勢は、まさに矯正医の原点です。

私自身、矯正専門医として日々の診療にあたる中で、

「丹根先生ならこの症例をどう診断されるだろう?」

と、今でも心の中で問いかけることがあります。

それほど、教授の指導は臨床現場に生き続けています。


■ 教授から受け継ぐもの 〜後進へのメッセージ〜

丹根教授が残された言葉の中で、特に印象的だったのは次の一言です。

「矯正治療は、患者さんの“人生を変える医療”なんや。」

矯正治療は単なる審美治療ではなく、

咀嚼機能、発音、姿勢、そして自信までも変える力を持っています。

私たち門下生は、この言葉を胸に刻み、

患者さん一人ひとりの人生に寄り添う矯正医でありたいと改めて感じました。


■ これからの広島大学矯正学教室、そして私たちへ

丹根教授の退任後も、広島大学矯正学教室は新たな体制のもと発展を続けています。

教授が築かれた学問と教育の土台は確固たるものであり、

後進の先生方によってその精神が脈々と受け継がれています。

私自身も、広島大学で学んだ矯正学の理念を胸に、

福山市の河底歯科・矯正歯科で地域の患者さんに最善の矯正治療を提供していきたいと思います。

これからも、教授に恥じない診療・研究・教育を続けていくことが恩返しになると信じています。


■ 終わりに 〜感謝の言葉を込めて〜

丹根教授、本当に長い間お疲れさまでした。

そして、これまでのご指導・ご厚情に心より感謝申し上げます。

これからは少しゆっくりと、

研究や執筆活動、そして趣味の時間を楽しまれることを願っています。

教授が教えてくださった「真摯に学び、謙虚に臨床に向き合う姿勢」を忘れず、

私も一矯正医として歩み続けてまいります。

筆者プロフィール:河底晴紀(歯学博士/日本矯正歯科学会認定医)

この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。

◾️資格

・歯学博士

・日本矯正歯科学会認定医

◾️所属

日本矯正歯科学会

・日本臨床歯科学会

・K-Project

・FCDC

・MID-G

広島県歯科医師会

・福山市歯科医師会 理事

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