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【千鳥・ノブさんの歯並びは学会レベル?】全包みのかみ合わせと4年矯正治療の成果

日本矯正歯科学会認定医・歯学博士  河底晴紀

お笑いコンビ「千鳥」のノブさんが、2024年5月30日深夜に放送された「アメトーーク!」(テレビ朝日系)の「歯を矯正してる芸人」特集で、ノブさんは自身の矯正治療の状況や驚きの噛み合わせについて告白しました。

今回は、矯正歯科専門医として、ノブさんの歯並びがなぜ「学会レベル」と言われるのか、どのような治療が行われているのか、そして同じような症例に対する治療法について解説します。


ノブさんの歯は「全包み」?その特徴とは

ノブさんは「上下の歯並び自体は普通」だと話しています。しかし、問題は噛み合わせ。通常は、上の前歯が下の前歯に軽く重なる程度が理想的な状態です。しかしノブさんの場合、上の前歯が下の前歯を完全に覆い隠してしまい、下の歯がほとんど見えない状態でした。

このような状態を 過蓋咬合(ディープバイト) といいますが、ノブさんの場合はさらに進んだ 全包み状態 であり、極めて珍しい症例といえます。担当した矯正歯科医が「学会発表に出してもいいですか?」と提案するほど、教科書的にも興味深い噛み合わせです。


全包みの噛み合わせによる問題点

ノブさんは番組内で「かむときは、下の歯と上の歯の間にできる隙間で食べ物をすりつぶしていた」と明かしていました。通常、食べ物は奥歯(臼歯)同士がしっかり噛み合い、すりつぶすことで消化を助けます。しかし全包み状態では、噛む面積が極端に少なく、以下のような問題が起こります。

  1. 咀嚼効率の低下

    食べ物を十分に砕けないまま飲み込むことで、胃や腸への負担が大きくなります。ノブさん自身も「消化器官への負担が心配」と語っていました。

  2. 歯や顎への負担

    噛み合わせが不均衡なため、特定の歯に力が集中し、歯の摩耗や欠け、顎関節への負担が増えるリスクがあります。

  3. 顔の骨格変化

    長期間、顎のバランスが崩れたままだと、下顎が後方に押し込まれ、いわゆる「しゃくれ」やフェイスラインの歪みに影響することもあります。


なぜ全包みになるのか?原因は?

全包み型の噛み合わせ(重度の過蓋咬合)は、遺伝や成長過程での顎の発達に起因することが多いです。

  • 骨格性の問題:上顎が過剰に前方に成長する、あるいは下顎の発達が不十分な場合に起こります。

  • 歯列の傾斜:上の前歯が極端に前傾している、または下の前歯が内側に倒れ込んでいる。

  • 習慣的要因:子どもの頃の指しゃぶりや舌癖などで、噛み合わせに影響が出るケースもあります。

ノブさんのケースは、骨格性の要因が強いと推察されます。


ノブさんが受けた矯正治療とは?

ノブさんは「下の寝ている歯を全部起こすことで、しゃくれも改善する」と説明を受け、矯正治療を開始したそうです。矯正期間はなんと 4年間。これは通常よりも長めで、症例の難易度の高さを物語っています。

治療の流れ(推測)

  1. ワイヤー矯正で噛み合わせを持ち上げる

    奥歯に少しずつ高さを出すことで、過度に覆いかぶさっている前歯を相対的に持ち上げ、噛み合わせの深さを改善します。

  2. 下の歯を立てる(起こす)

    下の前歯が倒れ込んでいる場合、矯正用のワイヤーやゴムを使って歯を正しい角度に起こします。

  3. 仕上げと微調整

    最終段階では、上下の歯のバランスを整え、自然に奥歯と前歯が機能するように微調整します。


治療にかかる期間と難易度

重度の過蓋咬合は、治療が難しく長期にわたるのが一般的です。

通常の矯正治療で2〜3年かかるところ、ノブさんのような複雑な噛み合わせでは4年以上かかることも珍しくありません。

これは、単に歯を並べるだけでなく、顎の動きや咬合の高さを根本から改善する必要があるためです。


「針金を取った後も…」難しい症例の現実

番組では、ノブさんが「針金を取った後、先生の反応が微妙だった」と冗談交じりに語っていました。これは、噛み合わせの微調整が非常に難しいことを示しています。


もし放置していたらどうなる?

ノブさんのような重度の過蓋咬合をそのまま放置すると、以下の問題が進行する可能性があります。

  • 顎関節症の発症

  • 奥歯の摩耗や欠損

  • 消化不良による胃腸障害

  • 歯周病のリスク増加

  • 見た目(顔の下半分のバランス)の変化

矯正治療は見た目の改善だけでなく、 健康維持のための大切な予防医療 です。


同じ悩みを持つ方へ|治療法の選択肢

福山市で矯正治療を行う当院にも、ノブさんのように「上下の噛み合わせが深い」「前歯がほとんど見えない」という相談が寄せられます。

当院では以下の治療法を組み合わせて行います。

  • マルチブラケット(ワイヤー)矯正

    大きく噛み合わせを動かす場合に有効。

  • マウスピース矯正(インビザライン)

    軽度の場合や仕上げに使用。

  • 顎間ゴムやスクリューアンカー

    奥歯の高さを持ち上げ、噛み合わせを改善。


まとめ|千鳥・ノブさんの矯正治療から学べること

  • ノブさんの「全包み」噛み合わせは非常に珍しい症例。

  • 4年という長期間の矯正治療で、下の歯が少しずつ見えるようになった。

  • 噛み合わせ改善は、見た目だけでなく消化器官や全身の健康維持にも重要。

 

#過蓋咬合 「チャンスの時間」より

福山市で矯正相談をご希望の方は、ぜひ一度当院へお越しください。

認定医による正確な診断と、患者様に合わせた治療プランをご提案します。

当院での症例です。

筆者プロフィール:河底晴紀(歯学博士/日本矯正歯科学会認定医)

この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。

◾️資格

・歯学博士

・日本矯正歯科学会認定医

◾️所属

・日本臨床歯科学会

K-Project

・FCDC

MID-G 

広島県歯科医師会

・福山市歯科医師会 理事

 

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