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矯正治療中の歯の痛みに効く鎮痛剤は?~福山市の日本矯正歯科学会認定医が解説~

日本矯正歯科学会認定医・歯学博士  河底晴紀

 

「矯正治療って痛いって聞くけど、実際どれくらい痛いの?」

「痛みが強いとき、どんな薬を飲めばいいの?」

矯正相談にいらっしゃる患者さんから、よくいただく質問のひとつが**“痛みと鎮痛剤”**についてです。

確かに矯正治療中は、歯を動かす力や装置の刺激で痛みが出ることがあります。しかし、ただ薬でごまかすのではなく、痛みの原因を理解し、適切に対処することがとても大切です。

今回は、矯正治療中の痛みの原因と、当院での痛みへの考え方、そして必要に応じた鎮痛剤の使用について詳しくお話しします。


1. 矯正治療中の痛みはなぜ起こるの?

矯正治療では、歯に弱い力をかけて少しずつ移動させます。このとき、歯の周囲にある「歯根膜」という薄いクッションのような組織が圧迫され、血流や神経が一時的に刺激されます。

これが**矯正特有の“鈍い痛み”**の正体です。

痛みの特徴

  • ズーンと重いような感覚

  • 噛むと響く

  • 食事のときに痛みを感じやすい

  • 新しいワイヤーやゴムを装着した後、数時間~翌日にピークが来る

特に初めてワイヤーを入れたときや、ワイヤーを一段階強いものに交換した直後は、2〜3日程度痛みが続くのが一般的です。

その後、歯や周囲の組織が新しい力に慣れると自然に和らぎます。


2. 根本的な原因を取ることが大切

痛みを感じたとき、多くの方はまず「鎮痛剤を飲もう」と思いますが、薬はあくまで一時的に症状をやわらげるだけです。

本当に大切なのは、痛みの原因を取り除くことです。

矯正治療中の痛みの原因には、大きく分けて以下の2つがあります。

  1. 歯の移動に伴う生理的な痛み

     → 矯正治療の過程で自然に起こるため、数日待てば軽減します。

  2. 装置やワイヤーによる物理的な刺激

     → ワイヤーの端が頬や歯ぐきに刺さっている場合など。調整やカットで改善可能です。

前者は矯正の正常な反応であり、ほとんどの場合は経過観察でOKです。

しかし後者は、原因を取り除かない限り痛みが続きます。薬を飲んでも改善しませんので、必ず主治医に相談しましょう


3. ワイヤーが当たって痛いときの対応

矯正治療中の痛みの中でも、患者さんからよく相談を受けるのが**「ワイヤーが当たって痛い」**というケースです。

ケース1:治療の一部としての違和感や軽い痛み

歯の移動によって装置やワイヤーの位置が変わり、口内の粘膜にこすれや違和感が出ることがあります。これはある程度、矯正治療の過程で避けられないものです。

この場合、装置用ワックスを使うことで、粘膜への刺激をやわらげられます。


ケース2:ワイヤーが飛び出して頬や唇を刺している

歯が移動すると、ワイヤーの端が後方に突き出し、口内を刺すことがあります。

これは痛みが強く、口内炎や傷の原因にもなりますので、すぐに主治医へ連絡して調整してもらうことが大切です。


4. 痛みに効く鎮痛剤

当院では、痛みが強くて日常生活に支障がある場合に限り、以下のような鎮痛剤を症状に応じて使い分けます。

ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム)

  • 即効性が高く、比較的強い鎮痛効果

  • 矯正治療の痛みのほか、抜歯後の痛みにもよく使われます

カロナール(アセトアミノフェン)

  • 効き目はややマイルドですが、胃への負担が少ない

  • 妊婦さんやお子さんでも使用可能(用量は医師指示)

ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)

  • 非常に強い鎮痛効果があり、インプラント手術や抜歯後の強い痛みにも使用

  • 胃腸障害リスクがあるため短期間使用

鎮痛剤は痛みが出る前に予防的に飲むと効果が高い場合があります。特にワイヤー交換直後などは、事前に服用しておくと痛みのピークをやわらげられることがあります。


5. 鎮痛剤以外の痛み対策

薬に頼らず痛みをやわらげる方法もあります。

  • 冷たい飲み物やアイスで冷やす(血流を抑えて痛みを緩和)

  • 硬い食べ物を避ける(おかゆ・やわらかいパン・スープなど)

  • 装置用ワックスを使用(頬や唇の粘膜を保護)

  • 正しい歯磨きで清潔を保つ(炎症や感染を防ぐ)


6. 歯の動きによる痛みの期間

新しいワイヤーを入れた後、歯が動き始めるのは数時間後から。

痛みのピークは1〜2日後に訪れ、多くの場合2〜3日程度で軽くなります。

もし1週間以上痛みが続く、または徐々に悪化する場合は、歯や歯ぐきの炎症など別の原因が隠れていることがあります。

その場合は早めに受診してください。


7. まとめ|痛みは矯正治療の一部。でも我慢しすぎないで

矯正治療中の痛みは、歯が動いている証拠ともいえます。

しかし、その痛みの原因はさまざまで、自然な反応によるもの装置の不具合によるものがあります。

  • 数日でおさまる生理的な痛み → 経過観察と生活工夫

  • ワイヤーの飛び出しや刺さり → すぐに主治医へ相談

  • 強い痛みで日常生活に支障 → 鎮痛剤の適切な使用

福山市の河底歯科・矯正歯科では、患者さんの痛みを最小限にする工夫をしながら、安全で確実な矯正治療を行っています。

「痛みが不安で矯正をためらっている」という方も、ぜひ一度ご相談ください。

あなたに合った最適な治療法と、快適に続けられる痛み対策をご提案します。

#歯が痛い

筆者プロフィール:河底晴紀(歯学博士/日本矯正歯科学会認定医)

この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。

◾️資格

・歯学博士

・日本矯正歯科学会認定医

◾️所属

・日本臨床歯科学会

K-Project

・FCDC

MID-G 

広島県歯科医師会

・福山市歯科医師会 理事

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