日本矯正歯科学会認定医・歯学博士 河底晴紀
お子様の乳歯が抜けたとき、「なんだか形が変…」「根っこがないけど大丈夫?」と感じたことはありませんか?
実はその“形”には、次に生えてくる永久歯との深い関係があります。
福山市の河底歯科・矯正歯科では、乳歯の抜け替わりを矯正治療の第一歩と考えています。
今回は、抜けた乳歯の形や色、そして小児矯正に関する正しい知識をまとめてご紹介します。
1. 抜けた乳歯の根っこの形はどうなっているの?
乳歯を抜いたときに「根っこがない!」と驚かれる親御さんは少なくありません。
しかし、これは正常な現象です。
● 乳歯の根っこは自然に溶けてなくなる
永久歯が下から生えてくると、その圧力によって乳歯の根が少しずつ吸収されていきます。
この過程を「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」といいます。
乳歯はもともと永久歯の「道しるべ」となる役割をもっており、永久歯が準備を始めると、根っこは自ら溶けていきます。
そのため、抜けた乳歯の形は「根っこが短い」「片方だけある」「まるで帽子のような形」といった特徴になります。
● 根が残っている場合は要注意
ただし、まれに永久歯の位置がずれていたり、下から生えてこない場合には、根が吸収されずに残ってしまうことがあります。
このような場合、乳歯が自然に抜けずに歯並びを乱す原因になることも。
もし1年以上経っても歯が抜けない場合や、左右差がある場合は、レントゲン検査で永久歯の位置を確認しましょう。
当院ではデジタルレントゲン・CT・iTeroスキャナーを活用し、発育段階を3Dで正確に評価します。
詳しくは設備紹介ページをご覧ください。
2. 乳歯の色は永久歯とどう違うの?
乳歯は永久歯に比べて白っぽく透明感があるのが特徴です。
一方で、永久歯は黄色味がかったやや濃い色をしています。
● 色の違いの理由
乳歯はエナメル質(歯の表面)が薄く、カルシウムの密度も低いため、光を通しやすい構造になっています。
永久歯はエナメル質が厚く、象牙質(その下の層)も発達しているため、やや黄みがかって見えるのです。
つまり、「生えたばかりの永久歯が黄色い」というのは自然なこと。
歯の成熟が進むと、だんだんと落ち着いた自然な色合いになります。
3. 乳歯が抜けた後に気をつけたいこと
乳歯が抜けた後の穴は、見た目よりも繊細です。
ここでのケアが、永久歯の健康な生え方を左右することもあります。
● 抜けた当日〜翌日
・うがいのしすぎに注意(血のかたまりが取れると治りが遅れます)
・指や舌で触らない
・固い食べ物を避ける
● 1週間以内
・歯ぐきが回復してくる時期なので、歯ブラシはやさしく
・もし痛みや腫れがある場合は、ドライソケット(治りにくい抜歯窩)の可能性もあるため、歯科医院でチェックを。
詳しくは抜歯後の治り方の記事も参考にしてください。
● 永久歯が生え始めたら
・歯の生える方向や間隔を観察
・歯の高さや傾きに左右差があれば早めに矯正相談を
当院では、初診相談の際にお子様の歯並びと顎の成長バランスを確認しています。
4. 小児矯正(1期治療)の目的とは?
「乳歯が抜けたあとの歯並びが気になる」——これはまさに小児矯正のスタートサインです。
● 1期治療の目的
1期治療(早期矯正)は、6〜10歳前後の「乳歯と永久歯が混在している時期」に行う治療です。
目的は、顎の成長をコントロールし、永久歯が正しい位置に並ぶスペースを確保することです。
・歯並びの乱れを軽減し、2期治療(本格矯正)を短縮できる
・口呼吸や舌の癖を改善して、自然な成長を促す
・顎の成長バランスを整え、顔貌のゆがみを防ぐ
特に福山市のように小児歯科医が少ない地域では、早期相談が重要です。
当院では日本矯正歯科学会認定医2名と日本口腔外科学会専門医2名が常勤しており、チームで診断を行っています。
5. 小児矯正を1期から始めるメリット
矯正治療は「早ければいい」というものではありません。
しかし、顎の成長期にしかできない治療があるのも事実です。
● 1期治療を行うことで得られる効果
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永久歯の抜歯リスクを減らせる
→ スペースを確保することで、将来的に歯を抜かずに並べられる可能性が高まります。 -
顎関節や顔のバランスを整えられる
→ 成長期に下顎の発育を正しい方向へ導くことで、しゃくれや出っ歯を予防できます。 -
発音や呼吸の改善
→ 歯並びの乱れは、滑舌や口呼吸にも関係します。早期対応で正常発達をサポートします。 -
心理的な負担が少ない
→ 小学生のうちに装置に慣れておくことで、中学以降の見た目の不安が減ります。
治療内容については小児矯正のご案内ページで詳しく紹介しています。
6. 乳歯の形を観察することは「矯正の第一歩」
抜けた乳歯の形を見れば、その子の歯の成長状態がある程度わかります。
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根っこが左右非対称 → 永久歯の生える位置がずれている可能性
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根っこが全くない → 正常な歯根吸収が進んでいる
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変色や欠けがある → 咬み合わせや磨き残しの影響かも
小さなサインの積み重ねが、将来の歯並びに大きく影響します。
乳歯が抜けるたびに「形・色・抜け方」をチェックすることが、矯正のタイミングを逃さないコツです。
7.乳歯が抜けた後の永久歯は「虫歯にならないこと」が何より大切
乳歯が抜けた後に生えてくる永久歯は、一生使う大切な歯です。
生えたばかりの永久歯はエナメル質がまだ未成熟で、酸に弱く虫歯になりやすい状態です。
この時期に虫歯をつくってしまうと、歯の形成や噛み合わせのバランスに悪影響を与えることがあります。
そのため、矯正治療と同じくらい「虫歯を予防すること」が重要です。
当院では、矯正治療中のブラッシング指導や定期的なフッ素塗布を行い、歯列だけでなく“歯そのものの健康”も守る取り組みを徹底しています。
また、矯正歯科だけでなく、一般歯科や高度な審美歯科治療も併設しているため、虫歯治療・ホワイトニング・補綴(かぶせ物)まで一貫して行うことができます。
矯正治療中に小さな虫歯が見つかっても装置を外すことなく対応できるケースも多く、専門分野を横断したチーム医療体制で患者様をサポートしています。
乳歯から永久歯への生え変わり期は、「きれいに並べる」と同時に「虫歯をつくらない」ことが何よりも大切です。
矯正と虫歯予防の両輪で、健康で美しい歯を長く保っていきましょう。
8. まとめ:乳歯の形は成長のサイン。矯正歯科で見守る安心を
乳歯の形には、永久歯へのバトンタッチの意味が込められています。
その「形」は単なる偶然ではなく、次の歯が正しく生えるための準備です。
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抜けた乳歯の形や色を観察する
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永久歯が正しい位置に生えているかを確認する
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気になるときは早めに矯正相談を
河底歯科・矯正歯科では、乳歯の抜け替わりから矯正治療まで一貫してサポートしています。
予約を取られてこちらの初めての方へをご覧ください。
生え変わり期のお子様の歯並びが気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
筆者プロフィール:河底晴紀(歯学博士/日本矯正歯科学会認定医)
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
◾️資格
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・日本臨床歯科学会
・K-Project
・FCDC
・MID-G
・福山市歯科医師会 理事