日本矯正歯科学会認定医・歯学博士 河底晴紀
はじめに:動機は学校検診での指摘
今回の症例は、17歳女子高校生の部分的な矯正治療の紹介です。
主訴は「歯並びのでこぼこ(叢生)」と「上の歯が前に出ていること」。
学校の歯科検診で歯並びの乱れを指摘され、本人も気になって受診されました。
この年代は成長期後半で、部分矯正でも効果が出やすい良いタイミングです。
部分矯正とは何か
部分矯正は全体的な矯正と異なり、治療範囲を限局して行う矯正治療です。
主に見た目の改善や咬み合わせの問題を解消したい部分にマルチブラケット装置を装着し、効率的に歯を動かします。
今回の患者さんは前歯の叢生と上顎前歯の突出が強く、部分的に治療を行うことが適応となりました。
治療開始からの経過:11ヶ月の歩み
治療はマルチブラケット装置の装着から始まりました。
ワイヤー矯正器具を歯に付けて、計画的に力を加えながら歯列を整えていきます。
装置の調整は約4週ごと。患者さんも学校生活など日常に支障なく続けられました。
約11ヶ月という治療期間は、部分矯正としては比較的短期間ですが、キャンセルしたりすることなく、適切な通院で目に見える結果が得られました。
主に前歯のでこぼこが整い、上の歯の突出も穏やかに改善され、自然な歯並びに近づきました。
治療のポイントと注意点
部分矯正の成功には、患者さんの日常での装着・清掃、医師の精密な調整が欠かせません。
特にマルチブラケット装置は歯に直接付けるため、磨き残しによる虫歯や歯肉炎のリスクを下げるための指導も重要です。
また、部分矯正は全体の噛み合わせ改善には限界があるため、継続的な経過観察も欠かせません。
叢生と上顎前突を部分矯正で改善できた理由
部分矯正は、全顎的な治療に比べると適応症例が限定されますが、今回のケースは…
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永久歯がほぼ生えそろい、骨格の過度なズレがない
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でこぼこの範囲が前歯中心で、奥歯は比較的良好
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上顎前歯の突出は軽度~中等度であった
これらの条件がそろっていたため、マルチブラケット装置による部分矯正で充分に改善が可能でした。
患者さんの声と術後の生活
治療後、本人からは「歯がまっすぐになり、笑顔に自信が持てた」「装置が見えるけれど、仕上がりを考えれば我慢できる」との感想をいただきました。
日常生活では口元の印象が向上し、写真撮影や話す時の表情が明るくなったとのことです。
今後は保定装置による安定期に入り、整った歯並びを長期的に維持していきます。
まとめ
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17歳の高校生にとって、部分矯正は効率よく審美改善を図る良い選択肢
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11ヶ月の継続によって歯並びの凸凹と上顎の突出を効果的に改善
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マルチブラケット装置装着中のケアと通院が治療成功のカギ
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継続的な経過観察と保定装置で安定した美しい歯並びを維持
河底歯科・矯正歯科では、患者さま一人ひとりの症状やライフスタイルに適した治療プランを提案しています。
歯並びや口元でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
筆者プロフィール:河底晴紀(歯学博士/日本矯正歯科学会認定医)
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
◾️資格
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・日本臨床歯科学会
・K-Project
・FCDC
・MID-G
・福山市歯科医師会 理事







