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シダキュア服用中で抜歯はできますか?|知らないと一大事になる注意事項について徹底解説

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
日本矯正歯科学会認定医・歯学博士   河底晴紀
 
シダキュア(スギ花粉症に対する舌下免疫療法薬)やミティキュア(ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法薬)などの舌下免疫療法薬を服用されている患者様は、口腔内に傷や炎症がある場合、あるいは抜歯などの口腔外科処置を受けた後の服用には、特に慎重な対応が求められます。
 
舌下免疫療法は、アレルゲンを含む治療薬を舌下より投与し、体内に少しずつ吸収させることで、アレルギー反応を弱めることを目指す治療法です。
 
【舌下免疫療法薬の添付文書に記載されている重要な注意点】
 
シダキュアやミティキュアの添付文書には、共通して以下の重要な基本的注意事項が記載されています
「抜歯後等口腔内の術後又は口腔内に傷や炎症等がある場合は、口腔内の状態を十分観察し、本剤投与の可否を判断すること。」
これは、口腔内の術後や傷・炎症がある場合、薬剤の吸収に影響を与えたり本剤が傷や炎症部位に刺激を与えるおそれがあるため、口腔内の状態に注意が必要であるためです
 
想定されるリスクと実際の安全性報告
 
舌下免疫療法薬はアレルゲンを含む製剤であるため、投与局所(口内)にアレルギー反応に基づく副作用(口腔瘙痒感、口腔浮腫、咽頭刺激感など)が、主に治療開始初期に発現する可能性があります。まれに、アナフィラキシーなどの全身性の重篤な副作用が発現するおそれもあります
 
ただし、安全性に関しましては、2023年3月現在、本剤を服用している患者様に窒息を含めて死亡例の報告はございません。また、本剤を服用している患者様が歯科治療後にショックなどの重篤な症状が発症したとの報告もございません
 
抜歯や口腔手術を受ける場合の具体的な対応
 
重篤な副作用を防ぎ、治療を安全に進めるために、患者様と医療機関との連携が極めて重要です。
 
1. 服用状況の申告と確認(医療面接の徹底)
歯科治療を行う前に、患者様(または保護者様)は、必ずシダキュア等の舌下免疫療法薬を服用していることを歯科医師やスタッフに伝えてください
 
歯科治療を行う側も、患者様からの申告がない可能性があるため、アレルギーに関する質問とともに舌下免疫療法の実施状況(開始日やこれまでの症状など)を確認することが推奨されています
2. 抜歯後、口腔内の傷や炎症がある場合の対応
抜歯やその他の観血処置後、あるいは口内炎や口腔内に強い炎症症状がある場合には、薬剤の投与によって出血や局所の炎症が持続する可能性があります
 
このような場合、患者様ご自身の判断で服用を継続せず、舌下免疫療法薬の服用について、必ず処方医(かかりつけ医)に相談し、指示を仰いでください。歯科医師も口腔内の状態を十分に観察したうえで、服用継続の可否を処方医に相談するよう指導することが大切です
 
日本小児歯科学会は、免疫療法中の小児に抜歯などの歯科治療を行う場合、必ずしも休薬を行う必要はないものの、抜歯後や口腔内に傷・炎症がある場合は、かかりつけ医に相談することが望ましいとしています
 
お子さまの歯科治療について
シダキュアやミティキュアは5歳以上が適応年齢であり、小児も長期にわたり治療を受けています日本小児歯科学会は、「舌下免疫療法中の小児歯科治療について」という提言を公開しており(2023年5月)、小児の抜歯や口腔外科手術の際には特に慎重な対応が必要です。対応策としては、大人の場合と同様に、口腔内の状態を観察し、服用の可否をかかりつけ医と連携して判断することが求められます
 
まとめ
 
シダキュア等の舌下免疫療法薬を服用中の患者様が抜歯や口腔内手術を受ける際、または口腔内に傷や炎症を認める場合には、必ず処方医と歯科医師の指示に従ってください
抜歯後や術後の一定期間の服用再開については、自己判断を避け、かかりつけ医と歯科医師の連携のもと、口腔内の状態が回復してから、安全性を確認したうえで適切な対応を行うことが重篤な副作用を防ぐ最善の策です河底歯科の医科歯科連携はこちら
 
河底歯科・矯正歯科では、国際的な水準での滅菌に努めています。
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理解を深めるために例えると・・・
舌下免疫療法薬の服用は、工事現場で作業員が特殊な資材を搬入する作業に似ています。通常は定められた入り口(健康な舌下粘膜)から安全に搬入されますが、もし現場(口腔内)に大きな穴(抜歯後の傷や炎症)が開いていると、資材(アレルゲン)が意図せぬルート(傷口から血管内)に大量に入り込み、予期せぬ大きな混乱(アレルギー反応)を引き起こす可能性があります。そのため、大きな穴が塞がり、安全が確認できるまで(傷や炎症が治癒するまで)、作業(服用)を一時中断し、監督者(処方医/歯科医師)の指示を仰ぐ必要があるのです。
 
(参照)
 

筆者プロフィール:河底晴紀(歯学博士/日本矯正歯科学会認定医)

この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。

◾️資格

・歯学博士

・日本矯正歯科学会認定医

◾️所属

日本矯正歯科学会

・日本臨床歯科学会

・K-Project

・FCDC

・MID-G

広島県歯科医師会

・福山市歯科医師会 理事

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