
日本矯正歯科学会認定医・歯学博士 河底晴紀
「前歯が出ているのが気になる」
「出っ歯といわれる」
「横顔を見ると口元が前に出ている感じがする」
「矯正したのに、逆に出っ歯っぽくなった気がする…」
このようなお悩みをお持ちの方は、実は少なくありません。
一般的に「出っ歯」と呼ばれる状態は、見た目の問題だけでなく、噛み合わせや発音、将来的な歯の健康にも大きく関わっています。
本記事では、出っ歯の本当の原因、間違った矯正で出っ歯になるケース、そして矯正治療で後悔しないためのポイントについて、矯正歯科の専門的な視点から詳しく解説します。
出っ歯とは?医学的にはどういう状態?
一般的に「出っ歯」と言われる状態は、医学的には主に以下のように分類されます。
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上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上の前歯、または上顎全体が前方に突出している状態 -
上下顎前突(口ゴボ)
上下の歯列全体が前に出ており、唇が前突して見える状態 -
歯性の出っ歯
骨格は問題ないが、歯の傾きや位置が原因で前歯が出ている状態
重要なのは、「出っ歯=前歯だけの問題」ではないという点です。
顎の大きさ・歯の大きさ・歯列のスペース・舌や口周りの筋肉のバランスなど、複数の要因が重なって生じるのが出っ歯です。
出っ歯の主な原因①:スペース不足
出っ歯の原因として非常に多いのが、歯が並ぶためのスペース不足です。
本来、歯は顎の骨の中にきれいに収まることで、自然な位置に並びます。しかし、
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顎が小さい
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歯が大きい
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成長過程で顎の発育が不十分だった
といった場合、歯が並ぶ場所が足りなくなります。
このとき起こりやすいのが、
👉 前歯が前方に押し出される
👉 歯列が外側に広がる
という現象です。
つまり、「スペースが足りない=出っ歯になりやすい土台」がすでにできている状態なのです。
出っ歯の主な原因②:間違った矯正治療
ここで、非常に重要なポイントがあります。
スペースがないのに、無理にデコボコを並べると出っ歯になる
これは矯正歯科の現場で、実際によく起こる問題です。
歯がデコボコしている(叢生)のに、
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抜歯をしない
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十分なスペース分析をしない
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骨格や口元のバランスを考慮しない
まま、「とにかく歯を並べる」治療を行うとどうなるでしょうか。
👉 行き場を失った歯は 前方に押し出される
👉 結果として 治療前より出っ歯になる
ということが起こります。
これは決して珍しい話ではなく、
「歯並びは整ったけど、口元が出た」
「横顔が悪くなった」
というご相談は、矯正のセカンドオピニオンで非常に多いケースです。
出っ歯の主な原因③:骨格的な問題
出っ歯は、歯だけでなく骨格の影響も大きく受けます。
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上顎が前方に成長している
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下顎の成長が弱い
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上下顎のバランスが崩れている
このような場合、歯だけを動かしても限界があります。
骨格性の出っ歯では、
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成長期のお子さん → 顎の成長誘導
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成人 → 抜歯矯正、場合によっては外科的矯正
など、年齢と状態に応じた治療戦略が必要です。
出っ歯は見た目だけの問題ではありません
出っ歯というと、どうしても「見た目」の印象が先行しがちですが、実際には以下のような影響があります。
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前歯で物が噛みにくい
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口が閉じにくく、口呼吸になりやすい
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発音が不明瞭になりやすい
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前歯が外傷を受けやすい
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将来的に歯の寿命が短くなるリスク
特に、前歯が突出していると、転倒や事故の際に歯を折ったり、唇を切ったりするリスクが高まります。
出っ歯の矯正治療で大切なこと
出っ歯を矯正で改善するために、最も重要なのは次の3点です。
① 正確な診断(スペース分析・骨格分析)
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顎の大きさ
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歯の大きさ
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歯列全体のバランス
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横顔(Eライン)
これらを総合的に分析しないと、正しい治療方針は立てられません。
② 必要な場合は抜歯を恐れない
「抜歯=悪いこと」と思われがちですが、
スペースが足りないのに抜歯をしない方が、将来的に問題になることも多いです。
適切な抜歯は、
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前歯を正しい位置に下げる
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口元を自然に整える
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安定した噛み合わせを作る
ための重要な治療手段です。

③ 矯正専門の知識と経験
出っ歯の治療は、
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ただ歯を並べる
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見た目だけを整える
というレベルではありません。
噛み合わせ・骨格・口元の調和まで考えた治療ができるかどうかで、結果は大きく変わります。
まとめ|出っ歯を「きれいに治す」ために
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出っ歯はスペース不足・骨格・治療方針が大きく関与する
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スペースがないのに無理に並べると、逆に出っ歯になることがある
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見た目だけでなく、噛み合わせや将来の歯の健康にも影響する
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正確な診断と適切な治療計画が不可欠
出っ歯の矯正治療で後悔しないためには、
**「なぜ出っ歯になっているのか」**を正しく理解し、
長期的な視点で治療を考えることが何より大切です。
「自分は本当にこの治療方針で大丈夫?」
「抜歯しない矯正で本当に出っ歯は改善する?」
そう感じた方は、一度専門的な診断を受けてみることをおすすめします。
正しい診断が、後悔しない矯正治療への第一歩です。気になる矯正治療費用はこちら
矯正治療は医療費控除を上手に使えば、かなりお安くお得に治療ができます。
筆者プロフィール:河底晴紀(歯学博士/日本矯正歯科学会認定医)
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
◾️資格
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・日本臨床歯科学会
・K-Project
・FCDC
・MID-G
・福山市歯科医師会 理事





