日本矯正歯科学科認定医・歯学博士 河底晴紀
矯正治療を進めている途中で、
「親知らずは抜いたほうがいいですね」
と歯科医師から言われ、戸惑われる方は少なくありません。
「矯正と親知らずは関係あるの?」
「まだ痛くないのに抜く必要があるの?」
このような疑問を持つのは当然です。
実は、矯正治療中だからこそ、親知らずの抜歯を早期に行ったほうが良いケースがあります。
ここでは、その理由を分かりやすくご説明します。
なぜ矯正治療中に親知らずの抜歯をすすめられるのか
親知らずは、
歯並びや噛み合わせに影響を与える可能性がある歯です。
特に矯正治療では、
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歯を計画通りに動かす
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並べた歯をその位置で安定させる
ことが重要になります。
その際、親知らずが残っていると、
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奥から前歯を押す力がかかる
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歯並びの後戻りを助長する
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矯正後の安定性が下がる
といったリスクが生じることがあります。
そのため、治療計画の一環として、親知らずの抜歯をすすめられることがあるのです。
早期に抜く方が良い理由① 根が短い
矯正治療中、特に若年の患者様の場合、
親知らずの歯根がまだ完成しておらず、短い状態であることがあります。
歯の根は、時間をかけて成長し、
最終的には長く・しっかりした形になります。
根が短いと何が良いのか
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抜歯時の抵抗が少ない
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歯を動かす力がかかりにくい
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抜歯操作が比較的スムーズ
といったメリットがあります。
反対に、歯根が完成してから抜歯を行うと、
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根が湾曲している
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骨と強く結合している
といった理由で、
抜歯の難易度が上がることも少なくありません。
早期に抜く方が良い理由② 歯根が「ぷにぷに」と柔らかい
成長途中の親知らずは、
歯根がまだ完全に硬化していない状態であることがあります。
実際に触ると、
肉球のように「ぷにぷに」とした感触をしていることもあり、
これは歯根の形成が未完成である証拠です。
歯根が柔らかいことのメリット
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抜歯時に歯根が割れにくい
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周囲の骨への負担が少ない
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腫れや痛みが比較的軽く済む可能性
このように、
身体への侵襲が少ない状態で抜歯できるという点は、
早期抜歯の大きなメリットです。
「痛くなってから抜く」では遅いこともある
親知らずは、
「痛くなったら抜けばいい」と思われがちですが、
実際にはそうとは限りません。
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痛みが出たときには炎症が広がっている
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腫れが強く、抜歯が難しくなる
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抜歯後の回復に時間がかかる
といったケースも多く見られます。
矯正治療中に計画的に抜歯を行うことで、
治療の流れを止めず、トラブルを未然に防ぐことができます。炎症がひどい時には事前に抗生物質を投与して抜歯するケースもあります。

すべての人が抜歯対象になるわけではありません
もちろん、
すべての親知らずを必ず抜く必要があるわけではありません。
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正常に生えている
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噛み合わせに影響しない
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清掃状態が良好
といった場合は、
経過観察となることもあります。
重要なのは、
矯正治療全体を見据えたうえでの判断です。
親知らずの抜歯は「矯正治療を成功させるための一手」
矯正治療中の親知らずの抜歯は、
単に歯を抜くという行為ではありません。
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歯を計画通りに動かすため
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矯正後の歯並びを安定させるため
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将来的なトラブルを防ぐため
こうした目的を持った、
治療計画の一部です。
まとめ|矯正中に親知らずの抜歯をすすめられたら
矯正治療中に親知らずの抜歯をすすめられた場合、
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根が短く、抜歯が比較的容易な時期である
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歯根が柔らかく、身体への負担が少ない
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矯正治療をスムーズに進めるため
といった医学的な理由があることがほとんどです。
不安な場合は、
「なぜ今なのか」「抜かない選択肢はあるのか」を
遠慮なく歯科医師に確認してください。
納得したうえで進めることが、
安心して矯正治療を続けるための大切なポイントです。
筆者プロフィール:河底晴紀(歯学博士/日本矯正歯科学会認定医)
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
◾️資格
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・日本臨床歯科学会
・K-Project
・FCDC
・MID-G
・福山市歯科医師会 理事






