
監修:河底歯科・矯正歯科 院長 河底晴紀(歯学博士・日本矯正歯科学会認定医)
口内炎ができたとき、あなたはどうしていますか?第一三共ヘルスケアより
「ドラッグストアで軟膏を買って塗っている」「とにかく刺激しないようにしている」「気づいたら自然に治っていた」——多くの方はこのいずれかではないでしょうか。
でも中には、「もう2週間近く経つのに一向に治らない」「治ったと思ったらまたすぐできる」という方もいます。
実は、口内炎は「ただ待てば治るもの」ではなく、原因によって対処法がまったく異なります。 間違った方法を続けていると、治りが遅くなるばかりか、他の病気を見逃してしまうリスクもゼロではありません。
この記事では、歯科医師の立場から、口内炎を早く治すために本当に必要なことを、できるだけわかりやすくお伝えします。
まず知っておきたい「口内炎の種類」——原因が違えば対処も違う
口内炎と一口にいっても、実はいくつかの種類があります。自分がどのタイプかを知ることが、早く治すための第一歩です。
① アフタ性口内炎(最も多いタイプ)
白〜黄色っぽい円形の潰瘍ができ、周囲が赤く腫れるのが特徴です。強い痛みを伴い、食事や会話のたびにしみます。多くの方が「口内炎」と思い浮かべるのはこのタイプでしょう。
原因は、免疫機能の一時的な低下、ストレス、睡眠不足、栄養バランスの乱れ(特にビタミンB群・鉄・亜鉛不足)などが絡み合って起こると考えられています。ウイルスや細菌が直接の原因ではないため、うつりません。
通常は1〜2週間で自然に治りますが、適切なケアで回復を早めることができます。
② カタル性口内炎(物理的刺激が原因)
頬の内側や舌の縁が赤くただれたり、腫れたりするタイプです。義歯や矯正装置が粘膜に当たること、熱い食べ物や飲み物によるやけど、誤って頬の内側を噛んでしまった傷などが主な原因です。
矯正治療を始めたばかりの患者さんによく見られます。原因となっている物理的な刺激を取り除くことが最優先です。
③ ウイルス性口内炎(ヘルペス性など)
単純ヘルペスウイルスが原因で起こるタイプです。小さな水疱が複数集まってできるのが特徴で、強い痛みや発熱を伴うことがあります。このタイプは感染力があるため注意が必要です。接触感染するため、タオルの共用や食器の使い回しは避けてください。市販の口内炎薬では対応できず、抗ウイルス薬の処方が必要です。
④ カンジダ性口内炎(カビが原因)
白いポツポツや膜状のものが口の中に広がるタイプで、拭き取ると赤くただれた粘膜が現れます。カンジダ菌(カビの一種)が増殖することで起こり、免疫力が低下したときや、抗生物質の長期使用後に起こりやすいです。抗真菌薬による治療が必要です。
⑤ 見逃してはいけない「口内炎に似た病変」
口腔がんや白板症(はくばんしょう)など、放置すると危険な病変が口内炎に似た見た目をしていることがあります。2週間以上治らない口内炎、繰り返す同じ場所の口内炎、輪郭がギザギザしている、触ると硬い——こうした特徴がある場合は、自己判断せず必ず歯科を受診してください。
「早く治したい」ときに本当に効くこと
種類の話が長くなりましたが、ここからは実践的な対処法です。特にアフタ性とカタル性に有効な方法をお伝えします。
ポイント① 「患部を触らない・刺激しない」が大前提
口内炎ができると、ついつい舌で触って確認してしまいますよね。でも触るたびに粘膜への刺激が加わり、炎症が悪化します。また、辛いもの・酸っぱいもの・熱いもの・固いものは、治りかけの粘膜を再び傷つけるため、治癒が大幅に遅れます。
この時期の食事は、豆腐・おかゆ・ヨーグルト・うどん・バナナなど、柔らかく刺激の少ないものを選ぶのがベストです。
ポイント② 「治す」のではなく「治せる体をつくる」という発想
口内炎の治癒を早めるのは、最終的には自分の免疫力です。そのために欠かせないのが以下の3つです。
睡眠: 免疫細胞は睡眠中に最も活発に働きます。できれば7時間以上の睡眠を確保しましょう。睡眠不足が続くと、口内炎が治りにくくなるだけでなく、再発しやすくなります。
栄養: 口腔粘膜の修復に直接関わるのがビタミンB2・B6・葉酸と亜鉛です。食事でいえば、豚肉・レバー・卵・牳・納豆・ほうれん草・牡蠣などに豊富に含まれます。食事から摂るのが理想ですが、サプリメントを上手に活用するのも有効です。
ストレスを減らす: ストレスは免疫機能を直接低下させます。「口内炎ができたのに仕事が忙しくて…」という状況は治癒の大敵です。ぬるめのお風呂でリラックスする、軽い運動をする、など意識的にストレスを発散させましょう。

ポイント③ 口の中を清潔に保つ
口の中に細菌が多い状態では、傷の回復が遅くなります。ただし、口内炎があるときに強くブラッシングすると、患部を傷つけてしまいます。
正しいのは「やさしく、しかし丁寧に」です。患部周辺は特に軟らかめの歯ブラシで丁寧にケアし、殺菌成分(CPC・塩化セチルピリジニウム)や抗炎症成分(グリチルリチン酸)が入ったうがい薬を活用することをおすすめします。刺激の少ない低刺激のものを選んでください。定期検診も大切です。
ポイント④ 市販薬を正しく使う
薬局で買える口内炎薬にはいくつかの種類があります。成分によって特徴が違うので、正しく選ぶことが大切です。
ステロイド系軟膏(トリアムシノロン含有): アフタ性口内炎に最も効果的。炎症を強力に抑え、治りを早めます。患部に薄く塗るだけで食事直前以外はいつでも使えます。当院ではデキサメタゾンを処方しています。
貼るタイプ(パッチ剤): 患部を保護しながら薬を浸透させます。食事中の摩擦も防いでくれるため、痛みのある時期に特に重宝します。
スプレータイプ: 手が届きにくい奥の方にできた口内炎に使いやすいのがメリットです。
いずれも「用法・用量を守って使う」が大原則。1週間使っても改善が見られない場合は、自己判断をやめて歯科を受診してください。
歯科に行くと何をしてもらえるの?
「口内炎で歯科に行っていいの?」と思われる方も多いですが、口内炎は立派な歯科の診療対象です。市販薬では追いつかない場合や、2週間以上治らない場合は、ぜひ受診を検討してください。
レーザー治療
当院でも行っているレーザー治療は、患部に低出力のレーザーを照射することで、炎症を抑え、組織の修復を促す治療です。処置は数分で終わり、多くの患者さんが処置後すぐに「痛みが和らいだ」と感じます。傷の治りも早まるため、重症の口内炎や、どうしても早く楽になりたいという方に適しています。
ステロイド軟膏の処方(デキサメタゾン)
当院では、デキサメタゾンを含む口腔粘膜用軟膏を処方しています。デキサメタゾンはステロイド系の抗炎症薬で、炎症を強力に抑え、痛みを早期に軽減する効果があります。市販のステロイド軟膏と比べて有効成分の濃度が高く、保険適用で処方できるため、費用の負担も少なく済みます。患部に直接薄く塗るだけで、治りが早まり痛みも和らぎやすくなります。
原因の特定と根本対処
繰り返し口内炎ができる方に特に重要なのが、この「原因の特定」です。歯のとがった部分が粘膜に当たっていないか、噛み合わせに問題はないか、義歯や矯正装置が適切か——こうした物理的原因を歯科医師が確認・調整することで、根本から口内炎を防ぐことができます。
こんな口内炎は要注意!すぐに受診を
以下に当てはまる場合は、早めに受診することを強くおすすめします。
- 2週間以上経っても改善しない
- 同じ場所に何度も繰り返しできる
- 発熱・倦怠感・リンパ節の腫れを伴う
- 口内炎が複数箇所に同時にできている
- 触ると硬さを感じる・輪郭がギザギザしている
- 白や赤のまだら模様が広い範囲に広がっている
これらは、口腔がん・白板症・ベーチェット病・ウイルス感染症など、他の疾患のサインである可能性があります。「大げさかな」と思っても、受診して「何もなかった」ならそれが一番です。当院では広島大学口腔外科より週1回口腔外科医ドクター岸先生に来ていただいていますので、大学病院レベルの診断が可能です。
口内炎を「繰り返さない」ために
口内炎は治っても、また同じような生活習慣が続けばまたできます。繰り返す口内炎を防ぐために意識していただきたいのが以下のポイントです。
定期的な歯科検診を受ける: 歯の鋭利な部分や不適合な補綴物など、粘膜を傷つける物理的原因を早期に発見できます。口の中の状態を定期的にプロに確認してもらうことが、口内炎の予防にもつながります。
歯磨きの質を上げる: 口の中の細菌バランスが乱れると、粘膜のバリア機能が低下します。歯磨きの習慣を見直すとともに、歯科衛生士によるクリーニングとブラッシング指導を活用してみてください。
栄養・睡眠・ストレスを意識し続ける: 一度治ったからといって元の生活に戻ってしまうと、また同じことの繰り返しになります。「口内炎ができたとき」だけでなく、普段から意識していることが長期的な予防につながります。
まとめ
口内炎は「よくあること」だからこそ、軽く見られがちです。でも、その裏には免疫力の低下、栄養不足、物理的刺激、ときには見逃せない病気のサインが隠れていることがあります。
市販薬で対応できる口内炎は多いですが、2週間以上治らない、繰り返す、発熱を伴うといった場合は、ぜひ一度歯科にご相談ください。
当院では口内炎の診察・レーザー治療・処方にも対応しています。「口内炎ごときで…」と遠慮せず、気になることがあればお気軽にお声がけください。
河底歯科・矯正歯科 広島県福山市三吉町2丁目14-8 TEL:084-931-0041 WEB予約:公式サイトより24時間受付
監修者プロフィール
河底 晴紀(かわそこ せいき) 河底歯科・矯正歯科 院長 / 歯学博士 / 日本矯正歯科学会認定医
大阪歯科大学卒業後、広島大学大学院歯学研究科(歯科矯正学)博士課程修了。2010年より現職。矯正治療を専門としながら、虫歯・歯周病・インプラントを含む総合歯科診療を実践。「10年・20年先を考えた治療」を理念に、患者一人ひとりに寄り添った診療を続けている。





