今回は、歯の生え変わり時期にみられるいくつのトラブルについてお話します。アシスタントの重森です。
●乳歯から永久歯への交換の仕組み
まずは基礎知識として、乳歯から永久歯への交換の仕組みについて説明しますね。
以前のブログでもお話ししましたが、乳歯は、単純に永久歯が生えてくるまでの歯というわけではなく、次に生えてくる永久歯を誘導するガイドの役割も担っています。
乳歯が生えるのと同時に、その下では永久歯が日々、成長しているのです。
個人差が大きいですが、生後9ヶ月頃に乳歯が顔を出します。そして、この頃に顎の骨の中では永久歯の赤ちゃんが作られていきます。
乳歯は3歳ころには生えそろいますが、この頃にはすでにそれぞれの乳歯の下に永久歯が成長して生える準備をはじめています。
そして、6歳頃から生え変わりが始まります。生え変わりが近づくと乳歯の根っこは少しずつ吸収されて短くなりグラグラしてきます。また乳歯の下から、成長した永久歯が顔を出そうと突き上げることで乳歯は更にグラグラしていき、やがて乳歯の根がなくなり自然に抜けて、そのあとから永久歯が顔を出します。
●乳歯がいつまで抜けない・・・
このようにして、乳歯から永久歯への生え変わりが行われるのですが、その間にいくつかのトラブルが起こる場合があります。
よくお母様から伺うトラブルのひとつに「乳歯がいつまでも抜けない・・・」というものがあります。
以前のブログでもお話ししましたように生え変わりには個人差が大きく、半年~1年弱くらいの幅はあります。
歯がグラグラしているが、歯が痛い、歯茎が腫れている、噛み合わせが悪い・・・といったことがなければ、自然に抜けるのを待ちます。
しかし、1年以上たっても抜けない場合、もともとそこに永久歯がない、事も考えられます。
「先天性欠如」といい、最近多くなっています。2007年~2008年にかけて行った調査では10人に1人がこれに該当するという結果が出ました。(日本小児歯科学会より)
下から突き上げてくる永久歯がない為、乳歯がいつまでたっても抜けないのです。
その結果、周りの永久歯との大きさの差で歯がデコボコになり、前歯の場合は見た目に違和感が生じます。奥歯の場合は、咀嚼に問題がおこってくる事も考えられます。
ただ、お口の中の状態は人それぞれなので、生えている乳歯を長持ちさせた方が良いのか、歯並びに影響するので抜いたほうが良いのか、はケースバイケースです。
場合によっては矯正を行うケースもあり、これは成長に合わせて対策を考えていく必要があります。
少しでもご心配な場合はご遠慮なく受診してください。お口のレントゲンを取れば永久歯があるかないかが分かりますし、定期健診をすることでその後の対策も細かく考えていくことができます。
●乳歯が抜けていないのに永久歯が生えてきた・・・
このトラブルもよく耳にします。
「このままで良いのだろうか?」と不安になりますよね。
乳歯が残ったまま、永久歯が生えてきた場合、乳歯が外側に倒れて、永久歯が内側に曲がって生えたりすることもあります。
このように歯並びにも影響を与える可能性が考えられますので、歯医者さんを受診されることをおすすめします。
医院では、反対側や上の歯がどんな状態なのかを診て、噛みあわせなども考え、グラグラしていなくても抜いたほうが良いのか、待ったほうが良いのかなどを状況に応じて判断します。
●乳歯は永久歯の歯並びにも関係が・・・
永久歯をきれいな歯並びにするためには、乳歯のうちからあごの骨を大きく育てることが大切です。ここで言う、あごの骨、とは「歯槽骨」という歯が生えている土台の骨のことで、ガイコツの下顎部分全体という意味ではありません。
この「歯槽骨」が歯に対して小さいと歯並びも悪くなります。
「歯槽骨」を大きく育てるためには、まず噛むこと!噛むことがお口の運動になります。
歯の生え変わりが始まってしばらく経ったころ、小学校低学年の頃がチェックポイントの1つ。この頃に、虫歯を作らないこと、よく噛む生活をおくること、よく噛むために食欲をわかせること、しっかり噛めるために正しい姿勢で食事をさせること、などに気をつけてみてください。
●生え変わり時期の食事
小学校中学年頃になると、奥歯(臼歯)が生え変わる時期になります。
奥歯なので歯がないと、上手に噛めない、咀嚼に時間がかかる、物によっては食べにくい・・・といったことがあります。
これは仕方ない事です。この時期はこのようなお口の中の環境であることを理解して、食事を早くすませるよう急がせないこと、子どもにしっかりと噛んで時間をかけて咀嚼することが大切であることを説明してあげてください。
乳歯から永久歯への生え変わり時期はいろんな不安があると思います。
ご心配なときはまず受診してください。
そして、心配事がなくても、気づきにくいトラブルに対処するため定期健診をおすすめ致します。歯科検診の結果と歯科で受ける検診の結果は、違うことがあります。歯科検診は、一人の歯科医師が大勢の生徒を一度に診るのと、十分な機材や設備がない中で行います。また、特に矯正治療というような歯科の中でも専門的な分野に関しては、矯正医でないと診断できないケースも多々あります。定期的に歯科医院でお口の中を診ることによって、適切な判断を下すことができます。ぜひ、機材や設備の整った歯科医院で検診を受診下さい。